ゲーム作りは外で見ているよりもずっと作業量が膨大です。
短編ぐらいのボリュームの物を製作するのなら良いのですが、普通のソフトハウスの作品並のボリュームが欲しいとなると、相当な作業量が発生します。
大雑把に全画面ノベルゲームの試算を出してみましょう。
二時間の映画程度のストーリーラインを文章にしたと見積もると、大体文庫本一冊分になります。(大雑把ですが)
平均的な文庫本一冊が大体300kb=四百字詰め原稿用紙380枚ぐらいです。
一日平均10枚分書くとすると一ヶ月強かかります。(38日)
これで大体中編と呼ばれるソフトぐらいになります。
これにスクリプト作業が発生します。
立ち絵の表示、背景表示、音楽組込程度の基本的なスクリプト組みで380枚を処理するのに大体三日程度でしょうか。
マルチエンディングでヒロインが多数になると、上記ラインに各ヒロイン分の枚数が加わります。
前半は共通エピソードとするなら、1ヒロインで上記ラインの半分程度、2ヒロインを追加すると1人分の容量となります。
3人ヒロインのマルチエンドで760枚、一日平均10枚の速度で書くと76日で二ヶ月強程度の作業日程となります。
これぐらいで長編、または並ボリュームと言われる規模のゲームとなります。
上記中編を構成する画像の量を見積もると、立ち絵が3人×2枚+表情差分3枚分。CGが普通イベント5枚、ヒロインイベント5枚の計10枚程度、背景が写真加工で7枚というところですか。
立ち絵の内訳は、ヒロイン、親友、脇役、という所です。
作業量的には、立ち絵がCG9枚換算。CGが10枚。背景がCG三枚換算。
CG換算で22枚分ぐらいになります。
CGの作業速度は平均的な同人グラフィカーで一日一枚。
したがって22日程度の時間が掛かります。
3人マルチエンドの場合は、立ち絵が初期3人+ヒロイン2人、脇役をもう1人と見積もって二倍の18枚CG数相当、イベントCGがヒロインイベント二人分を足してで20枚程度、背景も少々増えてCG10枚換算。
CG換算で48枚ぐらいになります。
したがって平均的な同人グラフィカーで48日程度の時間が掛かります。
中編規模でオリジナルBGMを付ける場合の音楽作業量の見積もりをしてみましょう。
中編で必要楽曲が6曲とします。平均的な同人音楽担当さんで一曲製作に5日程度掛ります。
6曲×5日で30日程度の時間が掛かります。
効果音の調達、製作に3日加算して、約33日ほど掛かる計算になります。
3人マルチエンドの場合は、純粋に楽曲を二倍にします。
12曲×5日で60日、効果音の調達は倍の作業にはならないので、一日程度増やしましょう。
従って音楽担当さんの必要日数は64日程度となります。
中編の作業量でスケジュール化の説明をします。
シナリオが40日程度
画像製作が22日程度
音楽製作が33日程度
との試算がでています。
「なんだ、真面目にやれば一ヶ月程度じゃん」
と思われそうですが、そうではありません。
そんな簡単な話なら、同人ゲーム界には現在の255倍以上の完成作が乱れ飛んでいるはずです。
ここで、無計画に作業した場合のありがちシミュレーションをやってみましょう。
シナリオライターはたまみちゃん。CGはお友達のけいこちゃん、音楽がお友達のはるみちゃんと三人編成。
企画会議は済ませており、中編製作でプロット、キャラ設定は済んでいるものとします。
夏のコミケの三ヶ月前、実は中編を作るにはキツキツの期間しかありませんが、たまみちゃんは心配していません、なぜなら、たまみちゃんは平均よりも書くのが早いからです。
たまみちゃんは気が乗りません、イントロ部を書いたり、プロットをなおしたりしています。三ヶ月もあるから余裕とか思っています。
けいこちゃんはキャラ設定の仕事をしています。
はるみちゃんは地道に音楽を作っています。音楽の仕事は特にシナリオと連動していないので独立したスケジュールで動くことが多いのです。
たまみちゃんはまだ気がのりません、書いては消し、書いては消しでなかなか作業が進んでいません、一ヶ月で出来上がり枚数が30枚ほどしかありません。
けいこちゃんはキャラ設定が終わり、立ち絵中です。イベントCGが書きたいのですがたまみちゃんのシナリオが上がって来ないので書くことができません。なんかたまみちゃんがだらけているのを見て、けいこちゃんもだらけます。
はるみちゃんは地道に作業してますが、他の二人がだらけているのを見て、なんとなく気分がゆるみます。作業速度がおちぎみです。
中核メンバーが堕落し、それを見た脇メンバーが堕落する負の連鎖を堕落連鎖と言います。よくある現象で同人サークルが解散する原因でもあります。
たまみちゃん、残りの日数と残り作業量を見て、真っ青になります。後30日ほどなのに、残りは300枚、毎日十枚書こうと決心し、真面目に取りかかります。
けいこちゃんは立ち絵が終わり手が空いてます。イベントCGの指示が無いから書けないのです。焦ってるたまみちゃんを見ると催促するのもなあと、とりあえず待機状態です。
はるみちゃんも速度を普通に戻します。若干の遅れではありますが、たまみちゃんほどではありません。
たまみちゃん、大焦りです。順調に筆は進んでますが、結構ぎりぎりっぽいです。この時点でけいこちゃんにイベントCGの指示書を出さねばならず、見積もりにない作業に胃がキリキリ痛みます。
けいこちゃんも焦り始めです。やっとイベントCGの指示が来ましたが、毎日やらねば間に合いそうもありません。
はるみちゃんは完成した曲が何点か、あと聞いて貰って手直しする曲が何点かです。
たまみちゃん、スーパーモード発動です。コミケに間に合わせるには、あと三日前までに作品をまとめなければなりません。CDROMの生産があるからです。
完成直前になるとやらねばならない雑務が物陰から襲いかかります。リードミーを書いたり、ホームページで告知したり、もうぶち切れそうです。
けいこちゃんもスーパーモード発動です。毎日製作しなければならない上に、たまみちゃんからリテイクくらってつかみ合いの喧嘩になりかけます。
はるみちゃんは全曲書き終えました、リテイク来るかな? と思ってましたが、たまみちゃんそれどころじゃなさそうです。
ぼろぼろのたまみちゃんを見て何か手伝いたいのですが、はるみちゃんはやれることがありません。
ちなみにスーパーモードというのは冗談ではありません。
〆切前に気合いが入ると人の能力は跳ね上がります。普段の5倍から30倍まで作業量が上昇すると聞きます。追いつめられると能力は信じられないほど上がる物なのです。
ですが、体壊す元になったりしますので、あまりお勧め出来ません。
たまみちゃんギリギリで全作業を終えてマスターアップです。
やりたいプロットを外したり、見直しができなかったりで、いろいろ悔いの残る結果となりました。
もうすこし時間があったらと思わないでもないですが、時間を浪費したのは自分なので文句も言えません。
けいこちゃんは、ほっと一息です。
自信のない絵を出さなきゃならなかったり、けいこちゃんも悔いが残ります。
たまみちゃんがもう少し早くCG指定をくれたらなあと思わずにはいられません。
はるみちゃんは満足です。
出来上がった物も面白いし、いいんじゃない? と言う感じです。
と、無計画にやるとこんな感じに推移しがちです。
共同作業なので1ブロックが遅延すると、他ブロックへの波及効果が怖いです。
今回はたまみちゃんがスーパーモード持ちなので間に合った感があります。
スーパーモードに移行できない人もいますので、その場合は間に合わないという結果になったはずです。
けいこちゃんが責任感が強いのも良い結果に結びつきました。たまに心の腰が弱いひとがいて、逃げる、連絡不通になる、終わってから出てくるという仕打ちを受けることがあります。
はるみちゃんが偉いように感じますが、音楽ブロックは独立なのでわりとこういう事があります。逆に他のメンバー関係なく不調になることもあり得ます。
最初に決めなければいけない事は、サークルリーダー、監督、ディレクターなどの名前で呼ばれる総責任者が誰かを明確にすることです。
総責任者の仕事は作業の指示、指定と、出来上がって来た成果物の評価、合否判定です。
五人ぐらいの小さめのサークルの場合、シナリオ兼総責任者、グラフィック兼総責任者など、兼任するのが普通です。
総責任者の仕事は結構大変ですが、小規模サークルの場合、独立してそれだけをやるほどの仕事量はありません。
うちのサークルは民主的に、合議にて開発を進めたいのですが、という意見があるかもしれませんが、ゲーム製作の作業量は合議で進行できるほど量の小さい物ではありません。
サークルに上下関係を作るのはやだなあと言う意見もありましょうが、偉い、偉くないの関係では無いことに注意してください。
仕事の取りまとめをする人が居ないと作業が非効率になるから決めるだけで、別に総責任者が偉いから決めるわけではありません。
総責任者には、メインの作業以外に、製作進行系業務をしなければなりません。
正確な作業容量さえつかんでいれば、スケジュールは効果あります。
問題は企画段階でボリュームを間違えている場合です。特に大河物にしかならないような企画を過小に見積もると致命的です。
CGや音楽は最悪出来なかった分は減らすと言う手段がとれますが、シナリオにその手は使えません。
では、スケジューリング有りでシミュレーションしてみましょう。
登場人物は無しと同じく、シナリオたまみちゃん、CGけいこちゃん、音楽はるみちゃん。
企画会議は済ませており、中編製作でプロット、キャラ設定は済んでいるものとします。
冬のコミケの三ヶ月前、前回の経験でこりごりしたたまみちゃんは大人数サークルを切り盛りしているのぞみちゃんにスケジュール管理を教わりました。
総責任者はたまみちゃんがやることにします。
まず、作業に入る前に、スケジュール表を作ります。
ここで決めるのはマイルストーンとデットラインです。
図5-2-1 スケジュール表
マイルストーンというのは外国の街道にある1マイルおきに置いてある道標です。日本の一里塚に当たるものです。
三ヶ月ぐらいの場合は二週間ごとの日曜日にマイルストーンをおきます。
この時点でスケジュールの進捗をチェックするのです。
デットラインというのは、このラインを越えると必死にならないと間に合わないラインです。
デットラインは自分の生産能力と企画上の見積もり分量で判断します。
たまみちゃんはどれくらいの生産能力があるのでしょうか?
「わたしね、一日30枚書けるよ!」
それはスーパーモードの時の速度ですね。平常はもっと少ないですよね。
「普通の時は、だいたい一日20枚かな」
はい、それも調子良い時ですね、巡航速度は10枚にしましょうか、毎日書けるわけでもないですからね。
毎日10枚が巡航速度とすると、400枚の見積もりだと、53日前になりますね。
実作40日、スクリプト作業に3日、連絡作業に7日、CD生産に3日です。
たまみちゃんが総責任者になるので、メイン作業以外に書類作業が増えます。
あと、メイン作業以外に、デバック作業もスケジュールに載せておきましょう。
同人ゲームでは予備日呼ばわりされ、ノベルゲーム等ではやっていないサークルもありますが、工程としては仕上げ作業にあたり、品質を上げる目的で欠かせない作業です。
ノベルゲームで一週間、スクリプトプログラムがメインのゲームでしたら、計画期間の40%はデバック作業に割いておきたい所です。
デバックも足して、たまみちゃんの最終デットラインは60日と決まりました。。
けいこちゃんの生産能力はどうでしょうか?
「CG一枚、うーん、色々だよ、キャラのアップなら一日三枚でも描けるし、ロングで背景多いと一枚に三日掛かったりする」
まあ、巡航速度で計算するとCG一枚一日でいいでしょうか?
「そうね、手の掛かる物先にやって、後半楽するやり方してるから、大体そんなものかな」
一日1枚の巡航速度で、CG換算22枚。それ以外にキャラデザインに7日、背景加工に3日、CD生産に3日で35日前がデットラインとなります。
デバックの7日も足して、けいこちゃんの最終デットラインは42日と決まりました。
はるみちゃんの生産能力はどうでしょうか?
「えーとですね、曲だけなら3日、ミックスとかマスタリングとかで、えーと、5日ぐらいですよ」
一曲5日の巡航速度で6曲30日、効果音調達、作成に3日、CD生産に3日で36日前がデットラインになります。
デバックの7日も足して、はるみちゃんの最終デットラインは43日と決まりました。
デットラインを決めたら、マイルストーン目標を決めます。最初の二週間(12日間)のマイルストーンまでに、どれくらい作業を進めるかの目標です。
「わたしは巡行速度10枚だから、二週間後に120枚上げればいいのね!」
たまみちゃん、目標ですから100枚にして、予備日を二日取りましょう。調子が良ければ飛ばしてください。あとその100枚の内でイベントCGがあるなら字コンテ(二部5-2参照)で指定して、けいこちゃんに回しましょう。
「あ、そうか、次のマイルストーンにけいこちゃんの手が空いたら困るのね」
「私の第1マイルストーンは、キャラ設定をして、背景加工かな」
けいこちゃんの作業工程は10日分ですから、予備日2日でそんな感じですね。
「わたしのマイルストーンは2曲でしょうか、1曲に効果音でしょうか?」
はるみちゃんは1曲+効果音で9日、予備日3日でどうでしょうか。
「意外と筆が進んで、シナリオが110枚まで進んだよ、CG指定は二枚かなあ」
「キャラ設定がちょっと難航して、背景加工が出来なかったですよ」
「1曲出来て、効果音も終わりましたー」
たまみちゃんが1日予定より稼ぎ、けいこちゃんが3日の遅れです、はるみちゃんは予定通り。
マイルストーン表に成果量を入れ、成果分だけデットラインを後退させます。
たまみちゃんの53日のデットラインが11日分下がって42日になります。
けいこちゃんの35日のデットラインが7日分下がって28日になります。
はるみちゃんの36日のデットラインが9日分下がって27日になります。
図5-2-2 スケジュール表
次に第2マイルストーンの目標を決めます。
「前半にけいこちゃんに2枚のCG指定文をだして、本文はえーとまた100枚」
CG指定文は1日程度消費しますので、予備日は1日ですね。
「私は前半に背景加工して、後半CG二枚?」
背景加工が3日、CGが2日、7日予備になっちゃいますね。
この場合たまみちゃんが先にプロットを見ながら書いていないシナリオのCG設定をする方法と、パッケージイラストやホームページ用イラストを描いてもらって、たまみちゃんのデットラインとけいこちゃんのデットラインを近づけるという二つの方法があります。
「けいこちゃん、パッケージとイラストで4日消費おねがいね」
「わかった、あとでパッケージ案詰めましょ」
「わたしは、2曲を次までにやっておきます」
はるみちゃんは2曲で10日、2日の予備日ですね。
第4マイルストーンまでにシナリオが上がり、一ヶ月の予備が出来ると思います。
まあ、そこまで上手く行くことはありませんが、細かいマイルストーンを置くと意外と柔軟にスケジュールを管理することが出来ます。
これは、どんな〆切であろうと、決めてしまうと人は気にしてしまうという心理を応用した手法なのだそうです。
「あのあの、一ヶ月早くゲームがまとまったら、残りの一ヶ月何をすればいいの?」
デバック作業や調整をしましょうね、たまみちゃん。
実際三ヶ月で中編がキツキツというのは、先の無計画ではデバックの時間がでてこない為なのです。
スケジュールでは一週間取りましたが、これはノベルゲームだからです。
普通のソフトが掛けるデバック作業工程は、開発時間の40%と言われています。
それだけの時間を掛けないとバグやミスは追い出せないわけですね。
仕上げに当たる工程です。
ノベルゲームでは
アドベンチャーゲーム、シミュレーションゲームになると動作チェックも複雑になり時間がかかります。
誤字脱字で多いのは字の間違いですが、Nscripter固有のスクリプト漏れという誤字があります。
Nscripterは命令を全て半角でやっているため、半角英数字が使えないのですが、2つセットなら表示されることがあります。(半角英数をむりやり表示する裏技でもあります)
スクリプトのタグが希に外れて画面に出てしまうことをスクリプト漏れと言います。
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「そ、そんなことはないよっ」w500
;!W500でウエイトを掛けたかったが、!を忘れて漏れる。
br
;空行を入れようとしたが、全角でbrと入れてしまい、漏れる
¥
;同上で、改行記号\を全角でいれてしまう。
;コメントを書込中に
改行を入れてしまい、表示されてしまう。
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